『バーナム博物館』スティーヴン・ミルハウザーさん

これも短編集。最初の「シンドバッド第八の航海」は『アラビアンナイト』のシンドバッドの本編と、老人となったシンドバッドの章が織り交ぜられて書かれています。合間の老人の時間の描写が美しすぎて涙が出そう。

この短編集はだいたいどれも、現実と虚構もしくは想像の世界が二重に描かれています。裏表紙には「幻影と現実のモザイク模様」って書いてあります。モザイクというより、同時に存在していると感じましたけど。

特にこの「シンドバッド第八の航海」のラストに書かれている、文章を読むときの二重世界にすごく共感しました。バーベキューの準備をしている横で本を読んでいる少年の描写。

一瞬のあいだ少年は、このうえなく明晰に、二重の世界を生きる。彼は真っ暗な洞窟に、ダイアモンドの谷間にいる。と同時に彼は、けば立った青い毛布が腕に貼りつくのを感じ、煙を立てているソーセージの匂いを嗅ぎ、川の匂いを嗅いでいる。

少年はこの瞬間を引き伸ばせたらいいのにと思う。二つの世界が完璧に調和したこの瞬間が、永遠につづけばいいのにと思う。

ああもう素晴らしいですよ。

それから表題作「バーナム博物館」。これ大好き。胡散臭い展示物や、どれだけあるのかわからない部屋、怪しげな館員。行ってみたいものですよ。

http://www.barnum-museum.org/

関わりがあるのかはわかりませんが、バーナム博物館がありました。