極上を読もう 第二回井伏鱒二

黒い雨

黒い雨

第二回です。第一回でいきなり本の読み方を間違っていたという、とんでもないことに気付いてしまった私ですが、今回は企画の目的を忘れるという事態に陥ってしまいました。夢中で読んでしまったので、文章味わうどころではありません。他の人がどうだか知りませんが、本に入り込んでしまうと「文章を読む→場面を想像する」ではなく、「文章を見る→映像変換」となります。不思議と途中でこうなった場合は、確実に最後まで楽しめるのです。これはもう、文章の上手い下手関係なく無差別でなります。

そういうわけで非常に面白かったです。

戦争物は感想が書き辛い、と以前から思っていました。心のどこかで「戦争についてちゃんと知っておかなかればならない」といった強迫観念にかられるからです。同じ人が死ぬ話でも、ミステリーではフィクションとして楽しめますが、戦争の話は純粋に楽しめない、楽しんではいけない気持ちになります。しかし『黒い雨』は素直に楽しめました。読み終わったあとに、気が付くと色々な場面が浮かんできて、他の本が読めなくなるほどハマッてしまいました。非日常の中の日常というのが、こんなに美しく感じるのかと。今でも思い出せば、涙が出そうなほど。

次回は太宰治さんかゲーテさんです。ところで外国人に「さん付け」すると、なんだかおかしな感じがします。